Brachmanが提案した概念記述(T-box)と個体記述(A-box)による知識表現方法は記述論理(DL)等によるオントロジ表現のベースとなっています。

OWL(Ontology Web Language) DL(Description Logic)等では、T-boxはクラスに関する記述に対応し、A-boxはインスタンスに関する記述に対応します。OWL DLでは、クラスとインスタンスは厳密に区別する必要があり、クラスのクラスといったものを扱うことはできません。OWL DLのこういった制約は決定可能性を保証するためのもので、そのような制約のないOWL Fullでは自由な記述が可能である反面、決定可能性は保証されません。

私自身は、知識表現においては、全ての「事例」(インスタンスレベルの外延的記述)を近似的に扱うために「概念」を導入するのであって、最初から「概念」がある訳ではなく、例外的な「事例」(「概念」に矛盾する「事例」)で概念を差分的に補足できるような知識表現方法も重要だと思っています。

知識表現と推論には密接な関係がありますが、基本的には別々のものだと思います。T-Box、A-Boxによる知識表現は、推論が容易になるようにDLに適合させて活用する以外にも、その表現効率をより生かす方向で活用することができると思います。そこから、さらに新しい推論の可能性が広がるように感じます。